秩父の街角で出会う、スパイスの世界「ユナイテッドスパイス」
番場通りにある「ユナイテッドスパイス(United Spice)」は、バーベキュー料理やスパイスを使った料理、工夫を凝らしたオリジナルドリンクなどが味わえるダイニングバーです。
番場通りにある「ちょっと気になる」入り口のお店


お店は秩父鉄道「御花畑駅」から5分ほど、秩父神社からも徒歩3分ほどの場所にあります。店先に掲げられたネオンライトのような看板が目印です。

入り口近くに掲げられた「全知全能」という漢字のサイン。外国人観光客にも目を引くように、インパクトのある四文字を掲げたのだそうです。「なんだろう?」と立ち止まってもらうための、ちょっとした仕掛けだそうです。
テイクアウト用の大きなガラス窓も設けられ、店先で立ち飲みにも対応できる造りになっています。少し奥まったところの扉から店内に入ると、異国情緒あふれる空間が広がります。
海の壁画とトルコランプが作り出す、異国の様な空間

店内に入ってまず目を引くのは、大胆に描かれた海の壁画。さまざまな青や緑をベースに、波や船、ヤシの木などのモチーフで構成され、全体的に落ち着いた雰囲気を感じます。
壁画をよく見ると、お酒の瓶や樽、アルファベットなども描かれていて、いろいろなストーリーや秘密が隠れていそう。訪れたメンバー同士やお店の人との会話のきっかけにもなりそうです。

「海の無い秩父でなぜ海の壁画?」と思う人もいるかもしれません。実はかつて、秩父盆地は「古秩父湾(こちちぶわん)」と呼ばれる浅瀬の海でした。秩父の守り神・武甲山の北側には石灰岩の地層があって現在も採掘が続いていますが、これはかつて海中にあったサンゴ礁が隆起してできたものだそうです。

もうひとつ目を引くのが、天井にずらりと吊るされた20個ほどのトルコランプ。色とりどりのガラスやビーズを使ったカウンター上のランプは、スタッフたちが手づくりしたものだそうです。
店名「ユナイテッドスパイス」には、さまざまなスパイスのように、「人や文化が混じり合う場所にしたい」という思いを込めたとのこと。アジアとヨーロッパの文化が交わる“トルコ”をモチーフにしたランプを飾ったのも、そんなテーマのひとつだそうです。
ランプはそれぞれ色や模様が異なり、やわらかな光が店内にゆるやかな心地よさを添えています。
多彩な料理でスパイスを体験

お店の看板メニューは、こだわりのスープカレー。スープカレーのルーツは諸説ありますが、「薬膳スープに野菜をごろごろと加えたものが始まり」とのいわれがあります。
店主の蒲澤さんはスープカレーを学ぶために北海道へ。教わったレシピ通りに作ってみても、どうしても「なにかが違う」と感じたそうで、そこから味の探求が始まりました。納得のいく味を目指して、スパイス香辛料ソムリエやインストラクターの資格も取得。試行錯誤を重ねながら、今の味にたどりつきました。

使うスパイスは約30種類。注文が入ってからブレンドして調理するため、少し時間がかかることもあります。ブレンドしたスパイスを、秩父産しいたけでとった出汁でのばし、マンゴーのペーストやチャツネを加えて自然な甘味とコクを整えているそうです。まずは定番の「やわらかチキンと野菜」(税込1,450円)をいただきましょう!

盛り付けられる野菜は季節によって変わり、この日は素揚げにしたゴーヤ、れんこん、パプリカ、オクラ、ズッキーニ、ナス、出汁で炊いた人参やしいたけ、ウズラの卵など盛りだくさんです。
地元の新鮮な野菜をふんだんに使い、「地産地消」をテーマに、地元農家さんとのつながりを大切にしながら、秩父の自然や季節を感じられるスープカレーに仕上げているそうです。
スープカレーは油をあまり使わないので、素揚げの野菜が入ることでコクが加わるそうです。スパイスの香りとしいたけの出汁の風味が重なり、体にしみわたります。具材の一番下に入っている千切りのキャベツも、スープカレーにしっかり絡んで美味しい…!!

ライスにトッピングできる炙りチーズ(税込+100円)もおすすめ。ご飯の上で軽く炙ったスライスチーズは香ばしく、スープとの相性も抜群です。
ライスに入っている押し麦がプチプチとした食感で、トロりととけたチーズとスープカレーとの相性は抜群です。

秩父名物の「わらじかつ丼」(税込1,300円)も、ユナイテッドスパイスではひと工夫した、ほかのお店では食べられないオリジナルテイストで提供しています。厚切りのロース肉を使い、端に脂身が寄らないよう切れ目を入れて切り開き、中央に脂身がくるように整形。この形にすることで、脂っぽさが口に残らないようにしているそうです。
スパイスを10種類ほど使っていますが、味わいはあくまでも王道のわらじかつ。ほんのりスパイスを効かせつつ、甘辛いタレで秩父名物らしさをきちんと残しています。脂っこくなく、甘すぎず、それでいてしっかりと「秩父のわらじかつらしさ」を感じられる一杯です。
黒板に並ぶ、おすすめのBBQメニュー
ユナイテッドスパイスでは、スパイスを効かせたBBQメニューも提供しています。カウンター横の黒板には、その日提供しているおすすめメニューが手書きで掲示されているので、ボードを見ながら「今日は何にしようかな」と悩むのも楽しみの一つです。
蒲澤さんがBBQを取り入れるようになったのは、とあるイベントがきっかけ。参加者として訪れた会場で、プロの料理人が大ぶりな肉を豪快に焼き上げる様子に惹かれ、その場で夢中になって写真や動画を撮り、独学で学んだそうです。
翌年、縁あってそのイベントを任されることに。そこから本格的にBBQに挑戦し、スパイスとの組み合わせや火入れの技術を磨き、ついにはBBQインストラクターの資格も取得。今ではユナイテッドスパイスの柱のひとつとしてBBQ料理を提供しています。


400g超の大きな「やわらか骨つきポークリブ」(税込1,500円)は、15種類のスパイスを配合したオリジナルの“ラブ”で味付けしています。たっぷりかかった特製オニオンソースが、ジューシーなポークリブととにかく合うんです。切り分けても豪快にかぶりついても、満足感をたっぷり味わえる一皿です。

こちらは「杉とスパイス香る焼き魚」(税込800円)。秩父の大滝地域でとれた杉材に干物をのせ、スパイスとともに焼き上げています。使われている杉板は、このメニューのために特別に製材してもらっているものだそうです。
干物は数種類から選べる日もあり、今回はアジを選択。脂ののったアジに杉の香りが移り、スパイスの風味と合わさって奥行きのある味わいです。
飲んでもおいしい、スパイスの楽しみ方

ユナイテッドスパイスでは、ドリンクにもお店らしい工夫が。定番のハイボールやチャイにスパイスを合わせるのはもちろん、実はラッシーにも“こっそり”スパイスを使っているそうです。
蒲澤さん曰く、「きっと誰も気づかないと思うんですけど、当店のドリンクなので当たり前のように入ってます(笑)」とのこと。
ラッシーはプレーン/カシスピーチ/ライチ/レモン/ストロベリーの5種類(各・税込550円)。

お店に余裕があるときは「好きなスパイス」や「味のイメージ」などを伝えると、即興でスパイス入りカクテルを作ってくれることも。お酒が飲めない人には、もちろんノンアルコールカクテルでも対応できます。


飲み会前後に「ウコン」のサプリやドリンクを飲む方も多いと思いますが、カレーによく使われるスパイス「ターメリック」は、実はウコンの一種。スパイスは料理だけでなく、漢方や生薬としても使われているので、“こっそり”仕込まれたスパイスを美味しく取り入れながら、気づかないうちに体も少し整っているかもしれません。
お店の人

店主 蒲澤惇介さん
店主の蒲澤さんは秩父市出身。前職では営業職として全国をまわっていました。各地の飲食店で気になる料理があればレシピを聞き出してノートに書き留めるなど、食への興味を少しずつ深めていたそうです。
縁があって出合ったスパイスやBBQの世界に、気づけばどっぷりと。興味のあることを、少しずつ自分のペースで深めてきた姿が印象的です。
地元の常連客も、観光でふらっと立ち寄る人も、どちらにとっても気持ちよく過ごせる場所をつくりたいという想いが、お店の空間や料理のひと皿ひと皿にも表現されています。
スパイスの楽しさと、異国情緒にふっと包まれる「ユナイテッドスパイス」。旅の途中に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

店舗情報
店舗・スポット名 | United Spice(ユナイテッドスパイス) |
ジャンル | ダイニングバー(スパイス・BBQ料理) |
所在地 | 埼玉県秩父市番場町9-5 (GoogleMapで見る) |
営業時間・定休日 | ランチ=11:00〜14:00、ディナー=18:00〜24:00 定休日:水曜日 |
電話番号 | 0494-23-5311 |
公式SNS |